心筋梗塞(冠動脈閉塞性心疾患)・脳梗塞 【治験例1】| あん鍼灸院

心筋梗塞

1.主訴

心筋梗塞 (冠動脈閉塞性心疾患)

2.患者様

50歳後半 男性

3.症状と現病歴

表1.症状と現病歴

病名 症状と現病歴
心筋梗塞 病院では、心臓の左冠状動脈6番の「血栓」による梗塞と診断されている。この患者様は左冠状動脈の前室間枝(前下降枝、左図)の梗塞と診断されています。その梗塞によって心臓の30%が心筋壊死していたという。現在、普通に仕事をしている。当時、みぞおちと背中にかけて痛み、息切れと動悸があったという。なお、息切れと動悸は酸素不足の状態だと分かります。一般に胸の中央から背中や顎、腕、腹部にかけて広がる痛みが典型と言われる。

心筋梗塞は心臓への冠状動脈の閉塞による不可逆的な心筋壊死の状態で30分以上の発作が起こった状態とされています。心筋梗塞には到っていない症状は狭心症と呼ばれ、冠状動脈などの血管が狭窄し、一時的に心筋虚血になった状態で胸痛を生じる。

また、患者様は小児の時に、腸閉塞(腸重積)を発症しているという。つまり、小腸管が閉塞して、一部の小腸が小腸の中に入って重なっている状態になっていた。この狭窄や閉塞という現象は、中空の臓器や血管や組織が中心に向かって収縮すると考えるのが良い。

脳梗塞 心筋梗塞の半年前に脳梗塞が発症している。当時、頭の中がガタガタと振動する感じがして数秒間、続いたという。脳梗塞の家系だが、父(80歳前半)は長生きしている。患者様は病院で血栓が原因と診断されている。通院して血栓溶解剤を服薬した。血栓の場所は不明でステントは入れていない。病院では経過観察中である。この脳梗塞も上記の心筋梗塞も血管の梗塞で、同じ原因から起こっている。

4.「心筋梗塞(冠動脈閉塞性心疾患)」

1)心筋梗塞(冠動脈閉塞性心疾患)とは

組織への血液供給がなくなることを「虚血」といいます。虚血が2~3分以上継続すると、心臓の場合、心筋組織の働きが低下したり、継続時間が長いと心筋細胞の壊死が起こります。一般に「心筋梗塞」とも呼ばれる心臓発作は、虚血により心臓の組織が機能低下したり壊死する病気です。心臓の筋肉である心筋が梗塞することではありません。故に病名は「冠動脈閉塞性心疾患」が使われ始めました。しかし通称、心筋梗塞で通っていますので、そのまま使います。

心筋梗塞は前兆があるものの突然に発症することが多いので、発症時は救急病院でしか対応できません。速やかに救急車を呼ぶことが大切です。前兆が分かった時に、また急性期を乗り越えて安定期になってから再発を防ぐために、『根本治癒』を目標に鍼治療を行います。

この病は発症前、胸に特有の症状が出ますので、心筋梗塞の可能性を発見することができます。その時点で、『発病を防ぐ』目的で、つまり『未病』のために根本治療を行います。対処療法ではこの病を防ぐことはできません。

2)原因

心臓の心筋は、全身に血液を送り出すために休むことなく収縮と弛緩を繰り返しています。故に酸素やエネルギーを豊富に含んだ血液を絶えず必要とします。その血液を心臓に送る血管は、大動脈が心臓から出たところで枝分かれする 『冠動脈』(もしくは冠状動脈ともいう)です。図1(心臓の構造)の左図に「右冠状動脈」(図1の左図)の起始が見えます。「左冠状動脈」の起始は大動脈の反対側にあります。右冠状動脈は冠状溝を通り心臓の後面に回って右冠状動脈後室間枝(後下降枝)となって心尖に向かって下降します。左冠状動脈は左冠状動脈前室間枝(前下降枝、左図)となって下降します。少し難しいです。

 

 

 

図1.心臓の構造(引用;「解剖生理をおもしろく学ぶ」増田敦子著).

心筋梗塞は、その冠動脈が突然、閉塞して心筋の一部への血液供給が大きく減少、または遮断されることで起こります。一般に病院では、冠動脈閉塞の最も一般的な原因は「血栓」と考えており、コレステロールなどの脂肪性物質(アテローム)が動脈の壁に蓄積することでできる血栓や動脈硬化が原因と言われています。しかし、この病気は突然起こり、直ぐに復帰することも多く、また直ぐ再発が起こることもあるので血栓やアテロームで詰まったと考えるより、冠動脈の血管が求心的に収縮して血液が流れなくなったと考える方が妥当です。アテロームが詰まると復帰は難しく、かつ徐々にアテロームが蓄積してくるので症状も徐々に起こります。また、冠動脈閉塞のその瞬間は生命を優先するので、冠動脈の状態を調べるわけには行きません。後の状態を検査で調べるほかありませんから、実際の状態というのは推定でしか分からないのです。

3)鍼経絡治療

冠動脈の閉塞は、腸などと同じ平滑筋でつくられた血管に対して経脈の変動によって起こり、さらに陰陽の求心性ベクトルが働いた結果、血管は瞬間的に収縮(閉塞)します。鍼治療は個々のヒトの生命をコントロールしている経脈の変動を元に戻し、『動態平衡』という血管の収縮と弛緩の均衡を整え、平衡が一方に偏らない恒常性を取り戻すことによって健康な身体に復帰させます。

5.「心筋梗塞(冠動脈閉塞性心疾患)」の治療結果

病にはそれを引き起こす「病因」が必ずあり、それを治すことが「体質改善」です。脈が正常になるまで鍼術で体質改善を続けた。
その経過を以下に示した。

経過 症状と治癒状況 備考
1 みぞおちと背中にかけて痛み、息切れと動悸・頻脈が頻繁にあったという。さらに不安感や頻尿、疲労感、不眠が常態であった。 当初、みぞおちと背中にかけて痛み、息切れと動悸があった。息切れと動悸、頻脈は酸素不足が原因である。不安感、頻尿、疲労感、不眠症は体質の変動に伴う症状です。
息苦しさが10日間で2〜3回あった。呼吸は普通にできる。初診時にあった症状で、息苦しさ以外はもうない。ランニングをしている。
病院で心電図、超音波検査、肺活量検査をした結果、異常なしであった。ゴルフの回数が増えて、食欲も増進して元気になってきたという。
4 肘の痛み以外はなくなった。
自覚症状がなくなったという。
病院で心電図、超音波検査、血液検査で異常なしと診断された。しかし、みぞおちがぎゅーと痛くなった。
指の関節が黒ずんでいたが完全に消えた。みぞおちの痛みも消えた。
病院の検査で脳梗塞をMRIで調べたところ、小さい梗塞痕があるが、他は異常なしと診断された。

脈状も全ての経脈で問題がなく平衡状態にあるので、治療を終えることにした。

7.から1年経つが、ずっと症状は起こっていない。

治癒

以上

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脈診経絡はり治療専門
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香川県高松市木太町1247-11
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