バセドウ病(甲状腺機能亢進症)/緑内障/膝関節症【治験例1】|あん鍼灸院

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緑内障

1.主訴

バセドウ病(甲状腺機能亢進症)/緑内障/膝関節痛

2.患者様

70歳後半 女性

3.症状と現病歴/治療結果

3−1.甲状腺機能亢進症(バセドウ病)

症状一覧

症状 詳細
動悸 30歳代に発症。バセドウ病の特徴である。
手指振戦 30歳代に発症。バセドウ病の特徴である。
食欲亢進 30歳代に発症。バセドウ病の特徴である。
眼球突出 30歳代に発症。今も右眼に軽度の眼球突出がある。バセドウ病の特徴である。
発汗 バセドウ病の特徴である。
不眠症 目が冴え、眠れない。睡眠導入剤をずっと服用している
眼が大きく開いている バセドウ病の特徴である。
眼の充血 眼圧が上がっているために充血している。これはバセドウ病というより緑内障の症状に含めた方がよい。
体重減少 3年前には63キロあった体重は、食欲が今も旺盛であるにも関わらず、2ヶ月前に54キロに、現在50キロに減少している。

病院で、ずっとバセドウ病薬と睡眠導入剤を服用している。甲状腺ホルモンの過去のデータがないのがつらい。

3–2.膝関節痛
左膝が痛い。10年前に右足の膝を痛めた。それ以降、膝に溜まる水を抜いてヒアルロン酸溶液を繰り返し注入している。リハビリもしている。しかし、20日前、突然、膝下のすべての関節や筋肉全てに激痛があった。どこが痛いか分からないという。歩行困難で杖を使用していた。座れない。足が棒のようでカニ歩き状態で移動した。朝には歩けるようになったが、すぐ再発し、再度、病院外科に行った。現在も病院で膝の水を抜いてヒアルロン酸溶液を注入する治療を続けている。治らない。

3−3.緑内障
右眼。当初(3年前)、眼圧は17~19だった。視野検査では60%しか見えない。しかし、患者様が言うには、実際には昼間はよく見える。夜は非常に見えにくい。現在も病院から眼圧低下の目薬が処方されている。

この状況を考えると、色を識別する「錐体(すいたい)視細胞」(図1)は正常だが、明暗を識別する『桿体(かんたい)視細胞』(図1)が損傷していることを表わしている。図1のように網膜には桿体視細胞と錐体視細胞が存在して役目を分担している。昼間の色の世界は錐体視細胞で、暗闇の中では桿体視細胞が働き、視覚を分担している。この患者様は主に桿体視細胞に損傷があると考えます。

4.「甲状腺機能亢進症(バセドウ病)」

1)症状と病因

病名としての『バセドウ病』は、甲状腺機能亢進症の代表例である。甲状腺機能亢進症は、甲状腺から甲状腺ホルモンが過剰に分泌される症状です。甲状腺ホルモンF-T3、F-T4、TSHは、血液検査で測定できます。症状には「眼球突出」「眼瞼後退」「食欲亢進」「体重減少」(食欲亢進しているのに痩せる)「手指振戦」「動悸」「頭痛」などがあります。しかし、患者様が持っている自身の体質(東洋医学でいうと体の制御方法)から外れることはありません。その体質の気の変動から症状が全て出ています。東洋医学で診断した病の『原因』は明確です。甲状腺機能亢進症は、体のコントローラー(経絡)を流れる気の変動による甲状腺の『動態平衡の失調』です。動態平衡が、甲状腺ホルモン低下の方向へずれると甲状腺機能低下症になります。甲状腺ホルモン増大の方向へずれると甲状腺機能亢進症になります。甲状腺はこのコントローラーによって甲状腺ホルモンを最適な状態にいつも制御しています。それを甲状腺の『動態平衡』と言います。動物の体は全て、この『動態平衡』という仕組みに基づいて機能しています。ですから、甲状腺疾患は兎角、当初、亢進症を呈していたのに、その後、低下症になることはよくあることだと考えています。「眼球突出」は、眼圧が上がって眼球が大きく膨張して前方に出ているように見えると考えています。「眼瞼後退」は眼球膨張の為、まぶたが閉まらず眼が開いたように見えます。眼圧上昇の原因もまた、眼球内の圧力を常に外界の気圧との関係で調節している『動態平衡の失調』、つまり平衡がうまく取れていないコントロール失調状態が、その実態と考えています。

現代医学で考える『バセドウ病』は、次のように説明されています。
甲状腺機能亢進症の最も一般的な”原因”は、「自己免疫疾患」と位置付けています。自己免疫疾患とは、免疫系が抗体を産生し、それが自身の組織を攻撃すると説明されています。通常、自己抗体は細胞を傷つけ、その機能を低下させるといいます。しかし、バセドウ病では、自己抗体によって甲状腺が刺激?される結果、甲状腺ホルモンが過剰につくられ、それが血液中に分泌されると説明されています。一方、眼球突出の”原因”は、次のように説明されています。眼球が収まっている頭蓋骨の空洞を眼窩といい、そこには、眼球を動かす「外眼筋」という筋と、その周囲にある「眼窩脂肪」などによって埋められています。「バセドウ病」は、外眼筋や眼窩脂肪に自己免疫疾患によって炎症が起き、その炎症による腫れのためにその体積が増え眼窩内圧(眼窩内の圧力)が高くなり、その結果、眼球が前へ押し出されて「眼球突出」が起こると説明されています。

2)緑内障

眼球内に栄養や酸素などを運ぶ眼の中の体液(眼房水)の供給量と排出量の動態平衡を瞬時、経絡の気がコントロールしています。『緑内障』は、『眼房水の動態平衡が失調』し供給量が多くなり、眼内圧(外部から測定する眼圧ではない)が上昇するために網膜にある『視細胞』が損傷すると考えています。つまり、動態平衡がうまく取れていないコントロール失調状態が、その実態と考えています。

現代医学によると、『緑内障』は、眼に栄養を与えている眼房水が、虹彩の裏側にある毛様体(後眼房)でつくられ、瞳孔を通って眼の前方(前眼房)に流れていき、虹彩と角膜の間の排出管(シュレム管)から排出される(図2)。うまく機能していれば、このシステムはちょうど水道の蛇口(毛様体)とシンクの排水口(シュレム管)のように働く。眼房水の産生と排出のバランス、つまり蛇口の開きと排水口からきちんと排水される量のバランスが保たれることによって、眼房水が自由に流れ、眼圧の上昇が防止されている。緑内障では、眼房水を排出する管(シュレム管)が詰まったりふさがったり覆われたりする。そのため、後眼房で新しい眼房水が産生されても、眼から外に出ていくことができない。言い換えると、水道の蛇口が開いたままなのに、排水口は詰まった状態になる。こうして眼房水が眼の中で行き場を失い、その結果、眼圧が上昇する。眼圧が高くなって『視神経』が耐えられる限度を超えてしまうと、『視神経』に損傷が生じます。この状態を『緑内障』と呼びます。(出典)MSDマニュアル(メルク社)

図1.網膜内の視細胞(桿体視細胞と錐体視細胞)

(引用;脳科学辞典)

5.治療結果

(1回目)脈診と腹診、および問診等に基づき、気の変動が起きている経絡に対して、鍼術で気の調整を行なった。

病は「体質改善」して根本的に治すことが鉄則だと2千年前から言われています。病にはそれを引き起こす「原因」(結果ではない)が必ずあり、それを取り除くことが「体質改善」(体質復元とも言える)です。

鍼は細く柔らかい直径0.18ミリ程の銀製鍼(ディスポーザー、一回きり使用)を使い、皮膚に0.1~0.2mm程、非常に浅く刺して気の調整を行う。しかし、患者様に鍼を刺された感覚はありません。そこで行う「気の調整」が当院の最大の特徴です。肘から先と膝から下の経穴(つぼ)を使い、鍼を以って皮膚全体に広がる気のネットワークである経絡の『動態平衡』を修正し、生命を統制します。

この患者様もまた、恒常性を維持する動態平衡が崩れて発症しています。鍼術は経穴に鍼を刺して抜くだけでは、症状を一時的に和らげることはできても根本治癒は難しい。根本治癒には気の調整という『鍼術の手技』が必要で、施術者の身体を通して指から患者様の体に作用します。鍼はあくまで、患者様と施術者の精密な連絡橋です。

(3回目)膝の腫脹と痛みがよくなってきた。関節の痛みも当初を100%とすると、その30%までに低下した

(4回目)病院で緑内障の視野検査をしたところ、視える領域(視野)これまでは60%であったが、今回は視野79%まで見えていることがわかった。つまり、視野が拡がった。眼圧は両目とも前回14、15が12と14に低下していた(眼圧は当初17~19)。なお、正常眼圧は20以下とされている。

(5回目)膝関節痛は、もう痛みがないが、まだ膝の前面がガクッと力が入らなくなり膝が頼りない。

(8回目)治療開始から約3ヶ月後に再度、病院で緑内障の視野検査をした。その結果、視野80%が保たれていた。眼圧は右;12、左;13であった(正常)。しかし、緑内障の視野検査は白い光源を使用しているので、夜の明暗(白黒)の視野(見え方)を反映しているが、昼間の三原色(カラー;赤・黄・緑)の視野(見え方)を十分、反映していない。従って、網膜に存在する明暗を識別する桿体視細胞と色彩を識別する錐体視細胞(上記、図1参照)のうち、前者の結果が反映されていると考える。夜、よく見えるようになったと言うのがそれを裏付けています。

(19回目)良く眠れるようになってきた。朝までよく眠れる。夜中に排尿で、トイレに1回行く位である。

(25回目)膝関節の痛みが睡眠中に出ていたが、それも20%くらいに減った。

(26回目)病院で再度、緑内障に対して検査した。両眼ともに眼圧12で良好であった。さらに視野検査では、視野85%を維持し良好であった。

(28回目)膝関節の痛みもガクッという力が入らない症状も無くなった。病院での治療とリハビリを中止したと聞いた。

(30回目)病院にてバセドウ病に対する血液検査をした。TSH;0.005、F-T4;1.60(正常値;0.9~1.7ng/dl)、F-T3;3.85(正常値2.3~4.3pg/ml)いずれも正常範囲内であった。バセドウ病は治癒していると考える。眼の開眼は完全ではないが、良くなっている(病院で過去に眼瞼下垂の手術もしているとのこと)。および、眼の充血はなかった。

以上をまとめると

症状 治療結果詳細 総括
バセドウ病 TSH;0.005(正常値;0.~ng/dl)

F-T4;1.60(正常値;0.9~1.7ng/dl)

F-T3;3.85(正常値2.3~4.3pg/ml)

眼圧;当初17~19⇒12

甲状腺ホルモンの値が正常になった。眼圧もまた低下した。
緑内障 視野が60%85%に回復した(残念ながら視野検査票がない)。 視野がかなり回復し、治癒
膝関節痛 痛みが全くなくなった。 治癒

以上

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脈診経絡はり治療専門
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香川県高松市木太町1247-11
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