『不妊症』【治験例39】≪自然妊娠≫|あん鍼灸院

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不妊

 

1.主訴

不妊症

2.患者様

30歳代後半

3.現病歴と症状

1)7週と9週目などに3回連続の繋留流産が起こった。子供は一人いる。

2)基礎体温が月経周期を通して全体に低く、ばらつきがある。周期は24日間、月経は3日で終了する。

3)2年前、副鼻腔炎を発症し、色のついた鼻汁が出ていた。病院では好酸球性副鼻腔炎と診断され、手術で鼻腔のポリープをとり、骨も削った。鼻に空気が通り易くなった。しかし、黄色~緑色の鼻汁が現在も出ている。

4)同じく副鼻腔炎が発症したときに、喘息のように咳が出た。ステロイド剤を吸入しているが、現在も咳が止まっていない。NO値(122)が高いという。

5)病院でホルモン値は正常と診断されている。現在まで不妊治療としてホルモン補充療法を行っている。

東洋医学の鍼で治したいと来院されました。

4.治療結果

(1回目)脈診と腹診、および問診等から治療方針を決定した。治療方針に基づいて、鍼術で経絡の気の調整を行なう。病は「体質改善」して根本的に治すことが鉄則だと2千年前から言われています。病にはそれを引き起こす「病因」が必ずあり、それを取り除くことが「体質改善」です。
鍼は皮膚に非常に浅く刺して気の調整を行う。しかし、患者様に鍼を刺された感覚はありません。そこで気を補ったり、または取り除いたり、気の滞りを流したり、気の働きを妨害する邪気を取り除く、この「気の調整」が当院の最大の特徴です。「気」とは身体を制御している電気エネルギーです。肘から先の経穴(つぼ)と膝から下の経穴を使い、皮膚全体に広がる気のネットワークの「動態平衡」を修正し、生命を統制します。

この患者様の『基礎体温が全体に低い』のはその平衡が崩れて発症しています。鍼術は経穴に鍼を刺して抜くだけでは、症状を一時的に和らげることはできても根本治癒は難しい。根本治癒には「気の調整という鍼術の手技」が必要で、施術者の身体を通して指から患者様の体に作用します。鍼はあくまで、精密な連絡橋です。

3回連続で稽留流産が起こったことに注目した。月経周期の低温期に基礎体温が高い時があり、さらに「ばらつき」があり、しっかりとした卵子をつくることができていない。また、受精・着床して卵子が細胞分割してゆく過程のエネルギー量が、高温期に基礎体温が低いために不足している。基礎体温曲線に注目して全体の基礎体温を上昇させる治療を行う。

(5回目)基礎体温のばらつきが止まらない。患者様にホルモン剤の服用を中止しているかを再確認した。まだ、ホルモン剤を服用しているという。本日から、中止した。ホルモン剤が体に入ると、基礎体温がばらつく。低温期で36.1から36.7度まで上下に振れる(0.6度のばらつき)。これでは、まだ丈夫な卵子を体が作れない。鼻汁が出て緑色をしている。痰も緑色である。副鼻腔炎である。咳が出る。風邪ではない。

(8回目)基礎体温が0.3度のばらつきに減ってきた

(12回目)現在、基礎体温が上昇し、高温期を形成している。これまで高温期に36.7度を超えたことがなかった。36.75度まで上昇した。しかし、それ以上は上昇しなかった。咳が出ている。緑色の鼻汁が出た。

(17回目)高温期の基礎体温が上昇し、ばらつきはあるが36.7~36.9度に上昇した。頭痛が1日あった。咳がなくなった。

(18回目)低温期の基礎体温が36.4~36.6度まで安定してきた。粘い鼻汁が黄色になった。頭痛は軽い。

(20回目)高温期の基礎体温が36.75~37.05度を多少の凸凹はあるものの維持できた。

(21回目)病院を受診したところ、自然妊娠していた。胎嚢が確認できた。5週目であった。

下図は、緑線は治療当初の頃の基礎体温曲線で、青線は妊娠した周期月のそれである。高温期の基礎体温曲線がかなり改善している。それで妊娠できた。本来ならば、生理日から1周期24日間位までの表示で良かったのだが、36日間を表示している。36.7度を高温期の境界とみる。

(22回目)胎嚢が18mmに成長していた。6週目。つわりはない。体質はまだ、十分改善されていない。脈診で判断できる。基礎体温(高温期)が下がることがあり、稽留流産のリスクがあるので9週までは最低、治療を続ける計画だったが、患者様の意思で終了されました。最低5ヶ月(20週、安定期)まで鍼治療を続けることが、出産と出産後に好影響を与えます。

以上

 

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