ネフローゼ【治験例1】|あん鍼灸院

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ネフローゼ

1.主訴

ネフローゼ

2.患者様

6歳 男児

3.現病歴と症状

1)3歳児健康診断で「頻発性ネフローゼ」と診断された。症状は、尿中タンパク質;定性+4)尿量減少、低タンパク血漿、浮腫である。

2)現在6歳になる。半年に1度の割合で「ネフローゼ」を発症し、病院に入退院を繰り返している。病院ではステロイド剤(副腎皮質ホルモン)、免疫抑制剤、ビタミンDが処方されている。利尿剤は出ていない。腎生検をしたところ、20数個の腎細胞のうち、3、4個が破壊されていることが確認されている。

3)運動をすると尿中にタンパク質が出る。同時に上眼瞼が腫れた。タンパク質が尿中に出るときには、就寝後、必ず午後11時頃にパジャマが濡れるくらいに寝汗をかく。

4.ネフローゼとは

1)症状
「ネフローゼ」とは、尿中にタンパク質がたくさん出るために血液中のタンパク質が減り、その結果、浮腫が起こる病気です。浮腫は、血液中のタンパク質が減少するために血管内浸透圧が減少し、血管外浸透圧と調和させるために血管の外に水分を移動させるために起こる平衡現象です。「タンパク尿」、「低タンパク血症」、「浮腫」、「倦怠感」、「食欲不振」、「腹水」などの症状が出る。運動をしたり、風邪などに罹ると上記の症状が増幅される。一時良くなっても再発率は80~90%と高い。

2)原因
「ネフローゼ」は、腎臓の糸球体(毛細血管が糸玉状に集まった組織で、血液をろ過して尿を作る;図1)の機能低下や不全によって、血中のタンパク質や血球が尿中に出てタンパク尿や血尿が起こる。この糸球体は水と塩類しか通過させないが、糸球体毛細血管の微細構造が陰性(遠心性の作用が優位な性質)になって、濾過器の穴(細胞間隙)の形が伸びて、または広がり、タンパク質のような分子量の大きい物質も通過させてしまう。このことが、全身にいろいろな症状を起こす。この過程以前に腎臓の糸球体機能を低下させる体質変動が起きたと考える。ネフローゼは腎炎と異なり、炎症性の疾患が見られないものを総称する。8割以上が6歳未満で発症し、性差は男児が多い特徴がある。

図1.  腎臓の糸球体(引用;日本腎臓学会)

3)治療
東洋医学鍼術「気の調整」を行い、陰陽の気の平衡(動態平衡)を図ることで根本治癒できる

糸球体にある腎細胞の部分的な死や腎細胞間隙の広がりがこの病の根源で、これを修復する、また、起こらなくすることが治癒につながる。これを鍼術で気を調整して治します。東洋医学では、男は数え年で8歳まで女は7歳までを小児といい、この患者様は、まだ6歳で腎臓が未完成の状態です。ですから、腎臓の障害も発生しやすくなっています。

現代医学界では「一次性ネフローゼ症候群」として難病指定され、原因不明とされています(難病情報センター;指定難病222)

5.治療結果

(1回目)脈診と腹診、および問診等から体と病、および経脈十二経の「陰陽虚実」を診て治療方針を決定。鍼で全身の気の調整を行う治療を開始。6歳ですが小児鍼を使わず、大人と同じように鍼をした。病は「体質改善」して根本的に治すことが鉄則だと昔から言われています。病にはそれを引き起こす「病因」が必ずあり、それを治すことが「体質改善」です。

鍼は皮膚に0.1~0.2mmほど刺して気の調整を行う。しかし、刺した感覚はない。その付近で気の不足を補い過剰を抜き去り、気の滞りを流し、気の働きを妨害する邪気を取り除く。この経絡を流れる「気の調整」が鍼術の特徴です。肘から先の経穴と膝から下の経穴を使い、皮膚全体の気のネットワークの動態平衡を修正します。

これまでの尿タンパク質は定性検査で(+4)と激しい

(3回目)現在、ステロイド剤を服用している。寝汗が出た。尿中にタンパク質が出た。尿タンパク質(+3)

(7回目)家族旅行の後、尿中にタンパク質が出た。また、風邪症状があるとタンパク質が出る。ステロイド剤を服用している。ステロイド剤を減らすと、タンパク質が尿に必ず出るので中止はできない。運動をしてもタンパク質が出るので、学校ではランニングや水泳の体育をいつも見学している。

(14回目)治療方針を変更した。

(17回目)鍼治療を継続しているが、尿中タンパク質の減少には到っていない。病院で処方された免疫抑制剤を服用すると黄疸の数値が高くなる(副作用)。

(21回目)自宅で尿検査したところ、尿タンパク質(+3)であった。鍼治療は継続中であるが、まだ良い結果が出ていない。

(30回目)病院で検査したところ尿タンパク質(ー)だった。やっと(ー)になった。糸球体にある腎細胞の部分的な死滅や腎細胞間隙の広がり(遠心性)を修復するのに、このくらいの時間が必要だったと考えます。

(32回目)治療が1ヶ月空いた。病院で尿検査したところ、尿タンパク質(+1)であった。治療を休止したため、症状が少し戻った。

(36回目)学校での運動会が終わった。昨年は尿中にタンパク質が出たが、今年は尿タンパク質(ー)で出ていない。ただし、かけっこ競争は、念のため欠席している。

(46回目)ステロイド剤を服薬しているが、量は半分になっている。4年間、ステロイド剤を服用しているので、薬をもっと減量して欲しいと病院側に両親が申し出ている様だ。尿タンパク質(ー)

(58回目)ウィルスに感染して吐いた。尿タンパク質(+2)となった。病院は入院を勧めた。3ヶ月間、治療を休んだ。

(60回目)ステロイド剤を服用している。尿タンパク質は(ー)

(68回目)依然として、尿中にはタンパク質が出ていない。尿タンパク質(ー)。脈診でネフローゼの脈状が正常になリつつある。

(71回目)尿タンパク質(ー)。脈診でネフローゼの脈状が正常になった。ここで、ネフローゼの治療を終了した。根本治癒したと考える。

以下、ステロイド剤を服用せずとも尿タンパク質(ー)を持続できていることを確認してゆく。

(79回目)病院にて尿検査をしたところ、尿タンパク質は(ー)であった。もう9ヶ月間、尿中にタンパク質は出ていない。

(94回目)依然、尿タンパク質は(ー)であった。

(98回目)ネフローゼの「尿タンパク質」は1年6ヶ月ずっと(ー)を維持している。ステロイドも、もう6ヶ月間服薬していない。脈も気の変動がなくなり、「ネフローゼ」は根本治癒したと判断した。

この間、学校で風邪に集団感染し入院する子もいたそうだ。患者様も嘔吐して39度の発熱があった。この発熱があった(体温を上げれた)ことによって風邪はすぐ治り、さらに尿にタンパク質が出なかった(ー)。学校では皆んなと同じようにして体育の授業もスポーツも行なっている。また、水泳教室にも通って楽しんでいる。

以上

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