ネフローゼ【治験例2】|あん鍼灸院

ネフローゼ

1.主訴

ネフローゼ

2.患者様

6歳 女児

3.症状と現病歴

表1.症状と現病歴

病名 症状と現病歴
ネフローゼ 3歳の時に発症。1ヶ月間入院した。瞼が腫れていたので病院へ行ったところ、尿検査で蛋白が4+であった。退院の時には、まだ蛋白が尿に出ていて2+だった。今後もステロイドの点滴を行うと告げられた。8月に腎生検をしたが異常なしと言われた。この頃、蛋白尿が寛解した。薬はステロイドと免疫抑制剤のネオーラル(シクロスポリン、5歳まで2年間服用した)で、4ヶ月後にステロイドは終了した。5歳ですべての薬を終了した。

しかし、その2ヶ月後すぐに、風邪をひいたのをきっかけとして瞼が腫れる程ではないが尿蛋白値が簡易型で2+~3+となった(再発)。その時からステロイドを再開することになり現在に至る。患者様のお母様は「ステロイドは治らないと認識したという。免疫抑制剤も今は服用をやめている」。翌年4月、また入院し、退院したところである。これを繰り返している。そこで当院に来院された。

発熱 風邪をひくと39~40度の熱が出る。しかし、風邪をひいていないこの日、夜中から翌朝の午前中、39.7度の発熱があった。これは身体の熱の制御ができていないことを示しています。

4.「ネフローゼ」とは

1)症状

「ネフローゼ」とは、尿中に体に必要な蛋白質が出てしまうために血液中の蛋白質が減り、その結果、浮腫が起こる病気です。浮腫は、血液中の蛋白質が減少するために血管内浸透圧が減少し、血管外浸透圧と調和させるために血管の外に水分を移動させるために起こる平衡現象です。「蛋白尿」、「低蛋白血症」、「浮腫」、「倦怠感」、「食欲不振」、「腹水」などの症状が出る。運動をしたり、風邪などに罹ると上記の症状が増幅される。病院では一時良くなっても再発率は80~90%と高い。

2)原因

「ネフローゼ」は、腎臓の糸球体(毛細血管が糸玉状に集まった組織で、血液をろ過して尿を作る;図1)の機能低下や不全によって、血中の蛋白質が尿中に出る。この糸球体は水と塩類しか通過させないが、糸球体毛細血管の微細構造、つまり濾過器の細胞間隙の形が広がり、蛋白質のような分子量の大きい物質も通過させてしまう。細胞濾過器の細胞欠如がその原因と考える。このことが、全身にいろいろな症状を起こす。

詳しくは、下図を見ながら説明します。腎臓には約100万個のネフロンという尿生成の機能単位(下図右側)がある。そのネフロンの糸球体に輸入細動脈から血液が流入し糸球体毛細血管網の細胞濾過器に入ります。するとそこであらかた不要な成分を濾過して輸出細動脈に出てゆきます。その時、濾過された血漿がボーマン嚢に染み出します。これが原尿です。ここから尿細管という組織を移動して、その間、必要な成分を身体に再吸収します。その後、尿となって膀胱に一時的に溜まり、その後捨てられます。

実は、この過程以前に腎臓の糸球体機能を低下させる体質変動が起きています。ネフローゼは腎炎と異なり、炎症性の疾患が見られないものを総称する。8割以上が6歳未満で発症するという大きな特徴がある。これは東洋医学で次のように説明できます。女児は数え年7歳、男児は8歳で「経脈」という臓器や組織をコントロールするシステムが完成します。すなわち、それより低年齢の小児は経脈が未完成です。それで体質変動、つまり経脈の病的変動によってネフローゼが発症しやすくなっています。

 

図1.腎臓の糸球体(引用;日本腎臓学会)

5.『ネフローゼ』の治療結果

腎臓の濾過器である糸球体細胞の部分的な欠如がこの病の根源で、これを治療する。東洋医学で前述のように、男は数え年で8歳、女は7歳までを小児といい、この患者様(女性)は、まだ6歳で腎臓とそれを制御する経脈が未完成の状態です。ですから、腎臓の障害も発生しやすくなっています。

なお、現代医学界ではネフローゼは難病指定され、原因不明とされています(難病情報センター;指定難病222)

「病」にはそれを引き起こす「原因」が必ずあり、それを治すことが「体質改善」です。脈が正常になるまで鍼術で体質改善を続けた。

その経過を以下に示します。

表2.治療経過

日付 症状の概要 治療結果
初回 脈診や問診等から体と病、および経脈十二経の「陰陽虚実」を診て治療方針を決定。鍼で全身の気の動態平衡を調整する治療を開始。6歳で経脈は未完成だが、ほぼ出来ているので小児鍼を使わず、根本治療の鍼をした。
14 風邪をひき39度の発熱があった。この時、治療から初めて尿蛋白が2+〜3+(定性検査)になった。その後、3日間で(−)となった。 病院では5日間の入院となった。
23 風邪で39度の発熱があったが、尿蛋白は(−)であった。 病院では1年ぶりにステロイドを中止した。
30 ウィルス性胃腸炎に罹り38度の発熱があった。尿蛋白が(4+) 翌々日まで3+だったが、次の日から(ー)になった。ステロイドを服用していなかったのに自然に治ったのでドクターが驚いていたと言う。ドクターは高熱が出ているので蛋白尿は仲々治らないと診ていたようで入院を予定していた。それも中止となった。
35 風邪をひき37.7度に熱が上がった。 前日から

以上

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脈診経絡はり治療専門
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香川県高松市木太町1247-11
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