アトピー性皮膚炎【治験例4】| あん鍼灸院

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アトピー性皮膚炎

1.主訴

アトピー性皮膚炎

2.患者様

15歳 男性

3.症状と現病歴/治療結果

表1.症状と治療結果一覧

病名 症状と現病歴
アトピー性皮膚炎 1)全身にアトピー性皮膚炎が出て赤く爛れ腫れている。一番ひどいアトピー性皮膚炎の箇所は臀部の両側である。

2)皮膚の落屑がある。

3)痒いので掻くと皮膚から汁がでる。

4)体に熱がこもる。

5)ステロイド剤は使用していない。ステロイドは副作用で使えないと言う。

尿の色 朝の排尿には色がついているが、日中は色も薄く量も少ない。
写真(初診時)

 

4.「アトピー性皮膚炎」

1)症状

「アトピー性皮膚炎」とは痒い湿疹が繰り返し起こる病で、目や耳の周り・首・肘や膝の窪み・背中や腹部などに発症します。痒い湿疹がほぼ左右対称に発症するのが特徴です。

2)原因

ヒトは、出生以降も後天的に体質が変わります。体質は、先天と後天とに分けて考えられていますが、これらは連続しています。ここで言う『体質』とは先天的に持っている体の制御機能で、連続して行なっている調節、すなわち平衡機能(正確には動態平衡という)を指します。その連続の中で起こった体質の変動によって、皮膚のバリア機能だけではなく皮膚の動態平衡が崩され皮膚機能が乱れます。そのために誕生後直ぐにでも「アトピー性皮膚炎」が発症することがよくあります。幼児の時にアトピー性皮膚炎が発症して何年か経過して症状が終息するが、暫くして再発するというのは体質の変動が良くなったり悪くなったりするからです。その動態平衡を実行しているのは『経脈』です。それは皮膚の表皮にあります。鍼術は皮膚表面から0.1〜0.2ミリの所に鍼を当て施術しています。

図1.皮膚の構造(モデル)

さて、皮膚の表皮は図1のように、基底層/有棘層/顆粒層/角質層(角層)に別れて性質も機能も別のものです。表皮と真皮は全く別々の組織で、支配している経脈も違います。特に基底層は表皮の細胞分裂の起点で、さらにメラニン細胞(メラノサイト)が存在します。紫外線が皮膚に浸入するとメラノサイトはメラニン顆粒を出し、皮膚が黒化します。紫外線に対する防御反応です。有棘層や顆粒層は表皮細胞の変化が見られるところです。角質細胞はそれらの細胞が死んだもので、7層くらいに積層し皮膚を守っています。最終的には垢となって落屑します。

ヒトの全身を覆う袋状の表皮は、その三分の一を損傷すると生命に危険が迫ると言われているように大切なものです。部位によって異なりますが、腹や胸側、腕や脚の内側の表皮が損傷した場合は、もっと少ない損傷でも死の危険があります。それは、生死に直結する陰の経脈が流注しているからです。それを損傷すると身体の制御が困難になるからです。

皮膚は、どちらかといえば現代医学の中ではややおろそかにされている分野ですが、実は生命体の命を存続させている最大の臓器で、重要度は脳と肩を並べるものです。強いていえば生命体としては皮膚が脳よりも大切で、脳はなくても生命は維持できるが皮膚がないと生命は全く維持できません。それは皮膚にある経脈、すなわち動態平衡コントローラーが体を制御しているからです。脳がない動物にはイソギンチャクやホヤなど多くの生物がいます。彼らは脳でないところ、即ち皮膚と触覚で生命体を維持している動物で、下等動物ではないのです。イソギンチャクは地球上で繁殖に成功している生物の一つです。

話を戻しましょう。「アトピー性皮膚炎」は皮膚が崩れたようにジュクジュクになって汁(体液)が出たり、その後、反対に皮膚が乾燥してかさかさになったり、真っ赤に炎症を起こし痒みが激しくなったり、皮膚が黒く変色したりと症状に激しいものを伴います。それらは皮膚の機能損傷によって起こるもので、図1のように正常皮膚細胞がきちんと積み重ねられた表皮であれば、アトピー性皮膚炎は起こりません。特に、『基底層』という細胞群の損傷は激しい症状を引き起こします。それは基底層が表皮の細胞分裂をしている場所であり、体を外界から守っている最大のバリアだからです。

このように皮膚の制御機能すなわち経脈の動態平衡が崩れ、皮膚の組織や機能が正常に働かなくなる病気が『アトピー性皮膚炎』です。治療は鍼術で陰陽の経脈の動態平衡機能を調整して、皮膚の機能を復活させることが不可欠です。それさえできれば、寛解しながら根本的に治癒すると思います。

5.「アトピー性皮膚炎」の治療結果

病にはそれを引き起こす「病因」が必ずあり、それを治すことが「体質改善」です。脈が正常になるまで鍼術で体質改善を続けた。

写真を元にその経過を以下に示します。治療の間には良くなったり悪くなったりして治癒しますが、単純に良くなっていることを中心にまとめています。

表2.治療経過

治療結果
初診時の右臀部の患部(ステロイドは不使用)
2週間後の状況
4回目の治療時。
ほぼ寛解した。
臀部は治癒した。しかし、未だ肩に症状が残っているので治療を続ける予定です。

以上

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脈診経絡はり治療専門
あん鍼灸院

香川県高松市木太町1247-11
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