1. 主訴
不妊症
2.患者様
30歳前半
3.現病歴と症状
1)1年前から病院で不妊治療をしている。病院では精子検査や卵管造影検査、フーナーテストなどの検査を行なっている。全て異常はないといわれている。不妊治療は、人工授精とその時のホルモン剤投与である。
2)月経周期が32~38日と長い。
3)基礎体温は、低温期(36.7度付近)と高温期(36.9~37.2度)である。「低温期の基礎体温が高い」ことに問題があるとわかる。
4)昨日、人工授精を行なっている。
鍼灸治療で体質改善をして妊娠したいと来院されました。
4.治療結果
(1回目) 脈診と腹診、および問診等から体と病、および経絡十二経の「陰陽虚実」を診て治療方針を決定。
妊娠がなかなかできないのは、その原因となる「病因」が必ずあります。その病因を治すことが治療の目標です。
妊娠は、月経以降に基礎体温が低く抑えられ、その間、卵子を育て全ての遺伝情報を書き込みDNAなどを完成し、ついでそれを包む卵胞の爆発という排卵が起こる。排卵後、体温が上昇し授精を促し、卵子の細胞分裂と卵子からの血管を子宮内膜に根をおろす着床が起こる。授精ができなかったときには月経が起こるという循環が大切です。
この患者様の問題点は、低温期の基礎体温が高いということです。基礎体温曲線の乱れは、一つには、発熱と冷却を司る経絡を流れるエネルギー(気)の不調和から起こる。もう一つには、ホルモン剤の長期にわたる投与によるものが多い。
鍼で全身の気の調整を行う治療を開始した。治療後、視界が明るくなったという。
(3回目)人工授精は陰性で、生理があった。生理後、低温期の基礎体温が36.4度に下がっていた。
(4回目)翌月にも人工授精を実施した。その後、定期健康診断で肺に影があるというので、病院内科で再検査した。CTで診た所、白い粒状影が点々と診られた。それは良性と診断され、そのまま放置することになったようだ。良性といえども、その病因がある。このことがあって治療方針を変更した。
(5回目)人工授精は陰性で、生理があった。ここで、自然妊娠を目指すことを決意された。
(6回目)緊張性頭痛があった。頭が締め付けられているようだった。これだけでも患者様の体質が絞り込まれて分かりやすくなる。今、低温期である。基礎体温は36.3~36.5度まで低下していた。治療前は、低温期の基礎体温が36.7度もあったが、正常になった。治療方針は続行した。
(7回目)排卵があった。検査薬でチェックすると陽性であった。生理開始から排卵までの低温期は18日間であった。今日は37.4度であった。
(8回目)排卵後、基礎体温は36.7~37.0度まで上昇した。全て、36.7度以上で推移し、良好な基礎体温曲線を描いていた。妊娠検査薬で調べた所、陽性反応が出た。
(9回目)高温期が続いている。自然妊娠でした。病院検査で胎嚢が見えた。5週目である。
(10回目)8週目。つわりがある。患者様の体質変化がまだ残っているので、つわりが出ることは避けれない旨を伝えた。体質改善がきちんとできるよう、もう少し治療を続けるよう伝えた。目標は16週まで。病院で心音を確認した。
(11回目)10週目。母子手帳がもらえた。脈状の変動は少なくなりつつある。患者様のご希望で今回をもって治療を終了した。体質改善はまだ、完了していない。少し残念でした。頭痛、肺の粒状影があったが、それらの原因を取り去って治療を終了すればもっと良かったと思う。体質改善をきちんと完了していれば、2子目は「自然妊娠」がすんなりできると思う。実際に、他の患者様から、そのような報告をいただいています。