1.主訴
掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)
2.患者様
50歳前半 女性
3.症状と現病歴
表1.症状と現病歴一覧
病名 | 症状と現病歴 | 手掌(初診時) | 足裏(初診時) |
掌蹠膿疱症 | 手のひら(掌)と足のうら(蹠)に、白い「膿み」をもった小さな水ぶくれ(膿疱)ができ、痒みを伴う。しばらくすると膿疱が破れ膿みが出て、次いで乾いて茶色っぽいかさぶた(痂皮(かひ))となる。さらに、表面の表皮が鱗屑状に剥離し、カサカサしてくる。その後、まわりの皮膚にも炎症が及んで赤くなる。膿疱が治ったと思ったら、次々と新しい膿疱ができて連続して表皮の剥離と炎症が繰り返される。 | 写真のように膿疱と皮膚の鱗屑剥離が共存している。 |
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4.「掌蹠膿疱症」
『掌蹠膿疱症』とは、手のひら(掌)や足のうら(蹠)に、「膿み」をもった小さな膿疱ができて、その後、表皮が鱗屑状に剥離する病気です。痒みを伴うことが多く、これを繰り返します。
1)症状
発症する所は、手掌と足裏が中心です。痒みを伴うことが多い膿疱ができ、しばらくすると、そこから膿みが出てきます。その後、膿疱は乾いて茶色っぽいかさぶた(痂皮(かひ))となり、剥がれ落ちます。次いで、まわりの皮膚に炎症(修復機能)が起こり赤くなり、表皮が鱗屑状に剥離します。また、損傷した皮膚は水分を保てないためにカサカサします。しかし、膿疱の中には細菌やウィルスは病原体はいません。したがって、直接触れても人に感染することはありません。
2)原因
基本的には、この患者様は体質変動から『掌蹠膿疱症』が発症しています。鍼治療を行うことで治癒したこの患者様の治療方針とその結果から原因(仮説)を考えます。この際、理化学研究所のランゲルハンス細胞の研究が参考になりますので引用します。
私たちの身体は一枚の連続した袋状の皮膚で覆われて、その中に臓器や骨、血液などを入れた仕組みをとっています。そして、その最外層は表皮と呼ばれ、身体で最も大きい臓器で直接、外界と接しています。下記の図1.「表皮の構造(モデル)」を見てください。表皮は角質層(角層)、顆粒層、有棘層、および基底層の四層から成り立っています。その中で表皮細胞の数%を占める「ランゲルハンス細胞」という表皮特異的な樹状細胞に着目します。この細胞は、表皮一面に突起を張り巡らせ、外敵が侵入していないかを常に見張って皮膚恒常性を保つ『免疫』の働きを持っています。
図1.表皮の構造(モデル)
つまり、ランゲルハンス細胞は病原菌やウイルスなどの外敵を認識すると活性化し、表皮から免疫細胞が集合するリンパ節へと遊走します。そして、T細胞などのさまざまな免疫細胞を活性化して皮膚に呼び込み、外敵を排除し身体を健康に保ちます。このシステムは、経絡脈が支配して制御し、「動態平衡」を刻々と行っています。さまざまな病原菌や化学物質に対する皮膚疾患や寒暖刺激に関与することが知られています。
しかしながら、この病は実際には病原菌やウィルスが皮膚に侵入した訳ではないのに、経絡の指示が誤動作して免疫システムが活性化し作動します。その結果、戦ってはいないのだが、免疫細胞は自死に至り、その死骸である「膿み」が表皮内に蓄積します。それが破れると表皮細胞の規則性が破壊されます。これが、『掌蹠膿疱症』です。
5.「掌蹠膿疱症」の治療結果
病にはそれを引き起こす「病因」が必ずあり、それを治すことが「体質改善」です。
写真を元に、その経過を以下に示します。
表2.治療経過
経時 | 治療結果(手掌) | 治療結果(足裏) | 備考 |
初診時 | 茶色い膿疱と表皮の剥離が共存して、症状が連続して繰り返していることが分かる。これからも膿疱が破れ、更に表皮の剥離が起こってくる。 | ||
17/10/07 | 手掌が綺麗になってきた。 | ||
17/12/13 | 足裏も綺麗になってきた。 | ||
18/01/27 | |||
18/6/13 | |||
18/7/25 | 手掌も足裏も、表皮がほぼ復元している。 | ||
18/9/1 | |||
18/10/23 | ほとんど表皮が綺麗に揃ってきた。 | ||
18/11/22 | |||
19/3/16 | 治癒。 |
以上
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脈診経絡はり治療専門
あん鍼灸院
香川県高松市木太町1247-11
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