1.主訴
皮膚潰瘍
2.患者様
50歳代 男性
3.症状と現病歴
表1.症状と現病歴一覧
病名 | 症状と現病歴 |
皮膚潰瘍
上写真 (来院時)
下写真 (病院治療後)
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1ヶ月前から足の中趾第3関節部に傷ができ、その後、瘡蓋になって痛くなった。それ以降も治る気配がない。痛みは刺痛である。締め付けたり緩んだりして痛い。鎮痛剤を服薬している。翌週、病院に行くと瘡蓋を剥がされた。剥がすのが一般的な治療方法だと説明されている。しかし、激しい痛みに襲われ歩くことさえ出来なくなった。瘡蓋で外界の酸素や刺激を防御しているのに剥がされたので痛みが発症した。患者様は痛い痛いといいながら足を引きずって入室して来ました。 |
4.「皮膚潰瘍」とは
1)症状と原因
現代医学では『潰瘍』と「壊疽」が同じ原因として登場しています。しかしながら、これらの症状は真反対の性質(原因)のものです。さらには、当治験例の『皮膚潰瘍』という病は現代医学では治らない難病だと言われています。先ずはこの原因から説明します。
組織や臓器は毎日、大量の細胞が自死(古くなって自分で死にます)し、そこに新しい細胞が入ります。これをずっと繰り返していて臓器はいつも新鮮で、機能と健康を保っています。『潰瘍』は組織の新生細胞が細胞の自死の後に入ってこなくて、組織に空白部が現れる現象をいいます。従って、組織が崩れて修復されません。従って、いつまでも患部が癒えず、組織は形成されず欠損します。それが皮膚の場合は「皮膚潰瘍」といいます。胃の場合は「胃潰瘍」、大腸の場合は「潰瘍性大腸炎」と呼んで「大腸潰瘍」のことです。小腸の場合は「クローン病」と言い「小腸潰瘍」のことです。いわゆる、消化管の細胞新陳代謝機能の低下です。免疫疾患ではありません。
一方、「壊疽」は血管が中心に向かって締め付けられ梗塞した結果、その先で虚血が起こります。それで栄養や酸素が運ばれなくて組織の細胞が死した結果、起こるものです。下肢の膝から下が壊死するというのが一例です。血管の一部梗塞による血液不足、すなわち虚血です。これらを混同してはいけません。
図1.皮膚の構造(モデル)(南江堂引用)
皮膚(図1参照)は「表皮」と「真皮」で構成されています。「表皮」は角層(角質細胞)、顆粒層(顆粒細胞)、有棘層(有棘細胞)、基底層(基底細胞)から構成されています。その下には、「真皮」があり、その中に毛細血管、毛包、汗腺、触覚細胞、皮脂腺などの器官があります。
『皮膚潰瘍』は先に述べましたように表皮が欠損しますので、「真皮」が剥き出しになります。潰瘍部に見える黄色の組織は「真皮」です。潰瘍部は真皮が剥き出しになるので、激痛が走ります。本来は塞がれているはずの真皮が空気などに晒される結果です。それで体は皮膚ではないけれど瘡蓋(かさぶた)をつくります。さらには、『皮膚潰瘍』はこの部分だけが症状として現出し、「壊疽」のように脚全体の組織が壊死することにはなりません。脚の血管が梗塞するとその先の組織が虚血になります。従って、脚全体が壊死することがあります。これが「壊疽」です。
5.「皮膚潰瘍」の治療結果
病にはそれを引き起こす「病因」が必ずあり、それを治すことが「体質改善」です。脈が正常になるまで鍼術で体質改善を続けた。
写真を元にその経過を以下に示します。
表2.治療結果
時系列 | 治療結果(写真) | 備考 |
1 | 瘡蓋がなくなると黄色の色をした組織が出てきた。これは真皮です。 | |
2 | 潰瘍に触れても何かで包まれているような痛みになった。少し赤い肉芽が出ている。 | |
3 |
炎症がやわらぎ、周囲の皮膚がつくられ潰瘍部を塞ぎ出している。また、肉芽が増えてきて皮膚の増殖が見られる。 | |
4 | 潰瘍の部分に皮膚が成長して見える。皮膚は30%位あり良好である。痛みがもう治ってきたと思うほどない時がある。 | |
5 | この1週間で皮膚の形成が50%になった。痛みが減った。 | |
6 | 痛みはなくなり殆どが皮膚で覆われた。 | |
7 | 中趾の皮膚潰瘍は治癒した。ところが新しい皮膚潰瘍が発生した。体質の変動がまだあるということだ。 | |
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10 | 潰瘍部は治癒した。皮膚は柔らかく伸縮し易くツッパリ感がなくなった。 | |
11 | 潰瘍部は皮膚に覆われ全快した。 | |
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13 | 治癒 |
以上
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脈診経絡はり治療専門
あん鍼灸院
香川県高松市木太町1247-11
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