1.主訴
顔面麻痺
2.患者様
40歳代前半 男性
3.現病歴と症状
1)1ヶ月前に発症。当初、顔面に麻痺が起こり、口唇、瞼などが下垂して眼を閉じることもできなかった。鼻も詰まって息がしにくかった。
2)翌日、総合病院に行ったところ「右側顔面神経麻痺」で重症と診断された。治療はステロイド剤を服用した。7日間、治療を続けても症状は治らなかった。ドクターから「重症で、薬の反応が遅い。どこまで回復するか不明で、この顔面神経麻痺は治らない。後遺症として残る」と告げられた。それ以上の治療はなかった。
現在の部位別症状は表1の通り。
表1
発症部位 | 症状 |
眼 | 右麻痺側は、完全に眼を閉じることが出来ない。まばたき時も右側は閉じない。眼を閉じる時、兎眼(眼球が上に向く)になる。右側の眉が下がっている。 |
額のしわ | 額に皺を作ろうとしても右麻痺側に皺が出来ない。 |
口唇 | 右麻痺側の上下口唇間が閉まらず、さらに口角が下がっている。うがいをすると口から漏れる。口笛を吹くことができない。 |
聴覚 | 耳鳴りがある。カーンとかカシャカシャという音が反響して、さらに大きく聞こえる。 |
味覚 | 味覚は正常である。 |
涙腺 | 涙がずっと出るときがある。 |
病院の治療では良くならないと県外から来院された。
また、病院での病名が「顔面神経麻痺」ですが、神経の麻痺ではなく筋の麻痺なので「顔面麻痺」と呼ぶのが妥当です。過去に病院では、水痘(水疱瘡)に罹患し、続いて顔面麻痺が発症した症例から、水痘ウィルスに感染した結果、脳内から顔面神経が出てくる頭蓋骨の穴で炎症が起こり、それが神経を圧迫して麻痺が起こると説明されています。しかし、水痘に罹患せずとも顔面麻痺は発症します。また、別に「帯状疱疹」は水痘ウィルスによるものと考えられているようです。結論として、この病はウィルスによるものではありません。患者様の現在の体質、すなわち身体の制御システムである経絡の変動によるものです。鍼術で経絡のエネルギーの動態平衡を調整すれば、病は治癒してゆきます。
4.治療結果
(1回目)脈診と腹診、および問診等から体と病、および経絡の「陰陽虚実」という気の(電気的な)変動を診て治療方針を決定。鍼で全身経絡の気を調整し、鍼治療を開始。
(3回目)早くも効果が出て顔のこわばりが良くなった。口笛が少し吹けるようにもなった。以下、同様の鍼治療で体質改善を行なった。
(7回目)大変良くなってきた。顔面麻痺の症状は、以下のようにかなり改善している。
部位 | 症状 | これまでの治療結果 |
眼 | 右麻痺側は、完全に眼を閉じることが出来ない。まばたき時も右側は閉じない。眼を閉じる時、兎眼(眼球が上に向く)になる。右側の眉が下がっている。 | 右麻痺側の眼瞼が下垂気味で苦痛だったが上がってきて、まばたき時にも閉じるようになった。眼を閉じる時の兎眼がなくなってきた。右側の眉も上がってきた。かつ、顔が引っ張られるような感じも楽になってきた。 |
額のしわ | 額に皺を作ろうとしても右麻痺側に皺が出来ない。 | 額の皺を強く作れる。 |
口唇 | 右麻痺側の上下口唇間が閉まらず、さらに口角が下がっている。うがいをすると口から漏れる。口笛を吹くことができない。 | 口笛を完璧に吹くことができるようになった。水が口から漏れることは全くない。しかし、口唇は右側に引っ張られて歪んでいる。 |
聴覚 | 耳鳴りがある。カーンとかカシャカシャという音が反響して、さらに大きく聞こえる。 | 耳鳴りがなくなり、音も反響しなくなった。 |
味覚 | 味覚は正常である。 | ー |
涙腺 | 涙がずっと出るときがある。 | 涙は普通に出る様になった。たらーと出ることはもうなくなった。 |
(9回目)口唇は右側に引っ張られて歪んでいる。この症状だけが、残っている。他の症状は改善した。
(11回目)口唇の引きつりが全くなくなった。これで顔の違和感がなくなった。
(12回目)治療を終了。
発症から時間が経つ程、治る速さは遅くなりますが、鍼治療で治癒します。本来ならば、他の症状もお持ちなので、体質改善してそれらも治癒させるべきだったと思います。
以上
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脈診経絡はり治療専門
あん鍼灸院
香川県高松市木太町1247-11
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