1.主訴
子宮内膜症(卵巣チョコレート嚢胞)
2.患者様
30歳前半
3.症状と現病歴
表1.症状と現病歴
病名 | 症状と現病歴 |
子宮内膜症(卵巣チョレート嚢胞) | 体調が悪く病院へ。血液検査から貧血と言われ、産婦人科の受診を勧められた。産婦人科では子宮内膜症と診断され、卵巣は長さ5cmの大きさに膨大していた。現在、病院で治療していて低用量ピルを服薬している。 |
月経 | 1)月経量が多くて1週間続く。
2)生理痛で、横になっても座っても立ってもいられないくらい痛い。月経の前と後半が生理痛で特に痛む。 3)病院から出た精神安定剤も服薬中。 |
4.「子宮内膜症(卵巣チョコレート嚢胞)」とは
1)子宮内膜症とは
『子宮内膜症』は、本来、子宮の内腔に存在するはずの子宮内膜(細胞)が、子宮内腔以外の場所、つまり、子宮筋層、卵巣、卵管、ダグラス窩、腹膜などで増殖と剥離出血を繰り返す病気です。妊娠が成立しなかった時、 子宮内腔からはがれ落ちた子宮内膜は、子宮から腟を通って体の外に流れ出ていきます。それが、月経です。しかし、子宮内腔以外の場所で増殖した子宮内膜は卵巣や腹腔内で剥離出血、つまり月経を起こしますが、体の外に流出せず腹腔や臓器に溜まります。それが、痛みなどの症状を引き起こします。
卵巣内に発生した子宮内膜症を『卵巣チョコレート嚢胞』と呼びます。
子宮筋層に発生した子宮内膜症を『子宮腺筋症(せんきんしょう)』と呼びます。子宮腺筋症は、子宮内膜が子宮筋層内で増殖するために、月経になると子宮筋層内で内膜が剥離出血を起こします。それよって、筋層の肥大化を起こしますから、子宮も大きくなります。その他、卵管、腹膜やダグラス窩にも発症します(図1参照)。
図1.子宮内膜症のできやすい場所(子宮筋層、卵巣、卵管、ダグラス窩など)(引用;国立がんセンター)
2)症状
『子宮内膜症』は、それほど重症ではないのに激しい生理痛があり、鎮痛剤を飲んでも治まらない場合もあれば、かなり進行していてもほとんど痛みを感じないこともあり、症状に大きな個人差があります。それは、子宮内膜症が起こっている場所によって変わります。この患者様は、その痛みを我慢できなくて、鎮痛剤を服薬しても、横になってもどのようにしても痛みが治らないという。
3)原因
『子宮内膜症』は、本来、子宮の内腔に存在するはずの子宮内膜(細胞)が、子宮内腔以外の場所、つまり、子宮筋層、卵巣、卵管、ダグラス窩、腹膜などで増殖と剥離出血を繰り返す病気だと述べました。子宮内膜細胞は本来、子宮内で増殖し子宮内膜、つまり受精卵が母体から生命に必要な全てのものを取り込むための血管の絨毛ですが、その子宮内膜細胞の母体となる幹細胞が誤って環境の近い場所に定着することで起こります。いわゆる体のコントローラ、つまり経脈の指示間違いです。したがって、これを正せばこの病気は治ります。経絡鍼治療で体質改善をして、この指示間違いを修正して根本治療に結びつけます。その経過は、最終的に脈診で決定しますが、その間の状況は、患者様が病院と連携して2~3ヶ月ごとに超音波検査などの画像診断を受けて、その都度の子宮や卵巣などの状態を知ればよく分かると思います。
病院では、『子宮内膜症』を「閉経まで我慢して気長につきあっていく病気」と位置づけています。つまり、妊娠状態や閉経状態では月経が起こらないので、治療は薬を飲んで、基本的に妊娠したような状態にもっていくか、あるいは更年期を過ぎた状態にもっていくようになります。このうち、前者はピルを服用し、後者はエストロゲンを減少させます。しかし、この方法は子宮内膜症そのものを治療するものではなく、月経を抑制し生理痛を減らす対処療法です。痛みが急に起こった場合には短期的に有効な場合があります。しかし、これは妊娠が不可能で、長期的には大きい問題となります。
5.「子宮内膜症(卵巣チョコレート嚢胞)」の治療結果
病にはそれを引き起こす「病因」が必ずあり、それを治すことが「体質改善」です。脈が正常になるまで鍼術で体質改善を続けた。
表2.治療結果
経時 | 治療結果 | 備考 |
1 | 月経で血の塊がなくなってきた。 | |
2 | ピルを服用し始めて体重が4〜5kg増加していたが、元に戻りつつある。 | 体質が改善されてきた証拠である。体重が増えて58キロになっていたが、54キロに減少した。 |
3 | 生理痛がなくなった。多かった月経血も通常くらいになった。 | 体重が52キロになった。 |
4 | このところ、子宮内膜症の薬、ピルを飲み忘れていた。しかし、生理痛がなかった。 | 薬を服薬していないのに生理痛がなかったと分かり、患者様はピルを中止した。 |
5 | 病院で超音波診断を行ったところ、子宮内膜症(卵巣チョコレート嚢胞)が綺麗に消失していると診断された。ピルは4ヶ月前に患者様の意思で中止している。 | |
6 | 患者様の意思で、治療を終了した | 患者様が、長期に亘って治療を続けた結果と考えます。 |
以上
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脈診経絡はり治療専門
あん鍼灸院
香川県高松市木太町1247-11
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