顔面麻痺【治験例10】| あん鍼灸院

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顔面麻痺

1.主訴

顔面麻痺

2.患者様

50歳代 女性

3.症状と現病歴

表1.症状と現病歴一覧

症状 現病歴
1月26日発症、朝から耳たぶがズキズキ痛んだ。仕事にゆくが昼ごろからふわふわして「めまい」が出てきた。顔の左右側面が痛む。1月27日、起床時、完全に顔面が動かなかった。 1月27日、耳鼻科を受診した。めまい止め薬とビタミン剤が出た。MRIをとるように脳外科病院へ紹介状が出た。脳外科へ行きMRIを撮ったが、脳の動脈や静脈に異常なしと診断され、顔面神経麻痺だろうということで耳鼻科に戻された。

1月28日、症状がきつくなってきた。さらに右耳介の中に水疱が出た。耳鼻科へ行き、MRIの結果を伝えた。右耳の水泡を見て予後の悪い『右』顔面神経麻痺だと言われ、公的病院を紹介され、すぐ行くように指示された。その病院では重症のハント症候群と診断された。発症から1週間後、顔面筋電図検査で1週間の回復率は4パーセントで重症と言われ、入院した。ハント症候群とは帯状疱疹後に起こる後遺症の顔面麻痺のことを言っていますが、帯状疱疹には罹患していない。病院では毎日ステロイド点滴をして2月4日退院した。現在もメチコバール(ビタミンB12)とニコチン酸トコフェロールを服用している。目や口などに症状がそのまま残っている。1ヶ月後の診察結果は、右小鼻のみ動き出したが、他の症状は変化がなかった。引き続き服薬中。4月6日、当院に来院。

頰、首、耳の下、眼の周りの顔面筋腱の引き攣り 現在も症状が残っている。特徴的な症状に患者さんは患部側とは反対の左側に引き攣りが感じられると言う。
上下の唇の間が開き、右患部側の口角が下がる。 現在も症状が残っている。
喋りにくい。 現在も症状が残っている。
完全に瞼を閉じることができない。 現在も症状が残っている。
兎眼 現在も症状が残っている。目を閉じようとすると黒目が上へ反転する。つまり、目を閉じようとすると眼球が上に向く。すなわち、眼球を上に動かす筋腱が収縮する。
額に皺を作ろうとしても右患部側に皺ができない 現在も症状が残っている。右患部は額の筋腱が動かない。
食事中に噛むと涙が出る 現在も症状が残っている。
右患部側の鼻唇溝が消えている 現在も症状が残っている。右患部の頰の筋腱が引っ張られている。
味覚障害 味が苦い。

 

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4.「顔面麻痺」

1)原因

ここで、「顔面麻痺」と記して「顔面神経麻痺」を書かないのは、この病気が神経障害ではないからです。また、「麻痺」とありますが、痺れて筋肉が動かないわけではありません。筋肉の収縮と緩和によって、詳しく言えば筋腱の緊張と弛緩の不均衡によって動かないのです。病院の治療で筋肉弛緩剤であるボツリヌス菌毒素を使ったボトックス注射で顔面が楽になることを診ても拘縮だと分かります。一般には患部を麻痺と言い、痺れているように思っています。ましてや、ウィルスによるものでもありません。ただし、病名はよく使われている「顔面麻痺」を使います。

顔面麻痺の原因は、顔面の表情筋腱をコントロールする経絡の動態平衡のアンバランスです。緊張と弛緩の平衡が図れないために、筋肉が動かない状態です。全身によく起こる現象ですが、特に顔には多くの経絡が流注して、それが変動すると大変、複雑に表情筋の不都合が起こります。

顔面麻痺は、ご自身の回復力だけでも良くなりますが、かなりの方に後遺症が残ります。口角や眉、瞼が片側だけ下がって「患部側」が引き攣っている方を見かけます。目に見えなくても、唾液が出ないとか、涙が出なくてドライアイになっているとか、逆に食べ物を噛むと涙が出る、頬が引っ張られるなど、日常生活に支障をきたしている方が多いように思います。一時的に症状は寛解していますが、まだ体質の変化はそのままだからです。治療は、体質の変動を元に戻す治療をします。

5.「顔面麻痺」の治療結果

病にはそれを引き起こす「病因」が必ずあり、それを治すことが「体質改善」です。脈が正常になるまで鍼術で体質改善の治療を続けた。

その経過を以下に示します。

表2.治療経過

経過 治療結果
口唇が上がってきた。鼻唇溝も出てきた。味覚の違和感が減ってきた。しかし、まだ上瞼は当初のように吊り上がっている。
2 下瞼が動き出して楽になった。顔の拘縮が解消して笑えるようになったと言う。
3 眉間の皺が作れるようになった。
4 患部側の瞼を閉じれるようになりだした。兎眼はなくなった。眉間の皺がきちんと作れるようになった。食事中、食べ物を噛むと涙が出て困っていたが減ってきた。顔の写真記録では顔つきが柔和になってきた。
5 顔面筋腱が柔らかくなってきた。瞼を左右同時に閉じれるようになった。
6 左右の瞼の形が近づいた。上瞼の緊張感が緩んだ。下瞼も水平になった。額が動かせるようになり額の皺が両側にできる。味覚障害が解消した。
7 患部、右頰の顔面筋腱の突っ張り感(引き攣り)がさらに楽になった。口の非対称が修復されてきた。当初は右患部の口角は下がっていたが、今は右患部側に引っ張られている。
8 口の位置が中央に寄ってきた。
9 ほうれい線が左右対称になりつつある。しかし、引っ張られている感じが残っている。
10 食事中に無意識に食べられているのに気づいた。顔面筋腱が拘縮し動いていなかったとわかった。

病名は顔面麻痺ではなく顔面拘縮としたほうが良いだろう。体調も良く、顔も気にならなくなったので終了希望を申し出された。治療を終了した。

以上

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脈診経絡はり治療専門
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香川県高松市木太町1247-11
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