1.主訴
テニス肘(上腕骨外側上顆炎)
2.患者様
40代後半 女性
3.症状と現病歴
表1.症状と現病歴
病名 | 症状と現病歴 |
上腕骨外側上顆炎 | 2ヶ月前から右肘外側が痛くなった。趣味のテニスでバックハンドやサーブを打つとき、掃除機をかける時など、肘と手首を伸ばす動作をするとピリピリした痛みが起こる。テニスをして発症するので「テニス肘」ともいう。 |
背中の張り | 肩甲骨の内側に筋肉の張りがある。仕事をすると強くなる。 |
4.「上腕骨外側上顆炎(テニス肘)」とは
1)症状と原因
掌を上に向けると、肘の外側に出っ張った骨が見つかります。これが上腕骨外側上顆です。そこには、手首や前腕を伸ばす筋肉(短橈側手根伸筋、長橈側手根伸筋、総指伸筋など)が重なるように、付着しています。上腕骨外側上顆炎(テニス肘)は、動作時に外側上顆から前腕にかけて鋭い痛みを生じます。特に、短橈側手根伸筋の付着部に痛みが出ます。
テニスのバックハンドでは、腕と手首を伸ばす方向へボールを打ちます。その時、ラケットから手首や上腕骨外側上顆へ、強い衝撃が加わります。その動きを繰り返すことで、上腕骨外側上顆から前腕の筋肉にかけて、痛みが起こります。
テニスの他、ものをつかんで持ち上げる時やキーボードを打つ時などにも痛みが出ます。そのため、普段の生活にも支障を来たす場合があります。
2)東洋医学で考える原因
東洋医学では、全ての事柄を陰と陽の2つに分けます。例えば、昼は陽、夜は陰に分けられます。しかし、昼(陽)がなければ夜(陰)は存在しません。陰と陽はどちらが欠けても成り立たないのです。
陰と陽は、人間の筋肉にもあります。すなわち、伸ばす筋肉と曲げる筋肉に分けられるのです。テニス肘は、伸ばす筋肉が働きすぎている状態です。筋肉は収縮し続けて、どんどんギュッと締まっていきます。いくつもの筋肉が付着している上腕骨外側上顆は、特に痛みが出やすくなります。反対に、曲げる筋肉は収縮できず、働きづらくなります。陰陽のバランスが崩れている状態となるのです。
他の病も同様ですが、病気は人体の陰と陽のバランス、すなわち経絡の平衡が崩れることで起こると考えます。病は、人体の皮膚全体に広がる気のネットワークである経絡の平衡が崩れて起こるものです。治療では、鍼で気の調整を行うことで陰陽のバランスを整えます。
5.治療結果
病にはそれを引き起こす「病因」が必ずあり、それを治すことが「体質改善」です。脈が正常になるまで鍼術で体質改善を続けました。
表2.治療結果と経過
回目 | 治療結果 |
3 | 肘の痛みは半分になった。しかし、テニスをして右手首が痛くなった。 |
6 | テニスは週1〜2回行っている。しかし、テニスをすると肘の痛みがはある。 |
9 | テニスは週3回行っている。痛みは減っているものの、テニスをすると肘にピリッとした違和感を感じる。手首の痛みは減ってきた。仕事が忙しくても背中の張りは出なくなった。 |
19 | テニスは週5回行っている。手首の痛みがなくなった。 |
27 | テニスをしてもどこも痛くない。しかし、痛みが出ないかと常に不安がある。 |
32 | 毎日テニスをしている。平日はテニスを1〜2時間、休日は4〜5時間行えるようになった。脈診で脈状の変化は消え、脈の変動はなくなっている。治療を終了した。 |
以上
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脈診経絡はり治療専門
あん鍼灸院
香川県高松市木太町1247-11
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