1. 主訴
不妊症
2.患者様
40歳前半
3.現病歴と症状
病名 | 症状と現病歴 |
双角子宮 | 子宮内腔は二つの部屋に別れ、ハート型の中心に向かう先端が子宮の内側に癒着していた。来院1年前に手術をして癒着部分を切り離し、子宮をハート型に縫合していた。手術前には生理周期の中で子宮内膜が形成されている。 |
子宮筋腫 | 子宮の外側に3~5cmのものが3個、小さいものが10個ほどあった。これも同時に手術で切除している。 |
子宮後屈 | ある。 |
基礎体温 | 高温期と低温期の二層を形成している。 |
病院での不妊治療 | 2ヶ月前と4ヶ月前に体外受精移殖を2回行ったが、妊娠できていない。凍結卵子は胚盤胞で2個保存されている。産科病院の紹介で来院されました。 |
4.双角子宮とは
子宮は楕円形で、その内腔は逆三角形の形をしています。双角子宮は逆三角形をした内腔の底辺部分が凹み、ハート型やウサギの耳型に変形したものを言います。
東洋医学では、双角子宮のような子宮の変形は生まれつきの変形も中にはあろうが、ほとんどは子宮の中心に働く求心力(陽の力)によって子宮内腔の底部(子宮底部;子宮内膜が成長するところ)が中心に向かって凹んで変形したものです。
西洋医学では、双角子宮は子宮奇形だと言われています。つまり、先天的な変形と扱っている。子宮底部から凹みハート形になり、一つの子宮の中に二つの子宮内腔があり、子宮口が二つに分かれているものを双頸双角子宮と呼んでいる。同じく、子宮内腔がウサギの耳のように二つに分かれて子宮口は一つのものを単頸双角子宮と呼んでいる。いずれも膣は一つです。 その変形度によっては、子宮底部が内側に少し凹み子宮内腔がハート形をしているものを弓状子宮と呼んでいる。双角子宮は手術によって変形を修正することが多い。
これらの一連の子宮変形はいずれも膣は一つで、子宮内腔の変形度合の大小で表現方法が違うだけで、子宮内腔の底部に求心力が働いた結果、ハート型からウサギの耳型(子宮口が二つのものも含む)に変形が起こった後天的な症状と診る方が理にかなっていると考えます。
5.治療結果
(1回目) 脈診と腹診、および問診等から体と病、および十二経の「陰陽虚実」を診て治療方針を決定。鍼で全身の気の調整を行う治療を開始。よく体質改善と言われますが、妊娠がなかなかできないのは、その原因となる「病因」が必ずあります。その病因を治すことが治療の目標です。
この患者様は双角子宮と子宮筋腫を症状として持っていましたが、手術によって子宮の形を変えたり筋腫部分を切除していました。しかし、それは病巣部を切り取っただけで病因は治せていません。基本的に、病因を取るために治療し体質改善をすることが必要です。
この患者様は、子宮に働く力のバランスが崩れ、求心力(陽の力)が大きくなって子宮底部が中心に凹んで変形しているので、遠心力(陰の力)を働かせ、元の状態に戻すことが大切です。これを気の調整による体質改善と言います。
さらに、基礎体温が低温期には低く抑えられ卵子を育て、卵子が育てばそれを包む卵胞の爆発という排卵が起こり、続く高温期には体温が上昇し卵子の成長と卵子からの血管を子宮内膜に根をおろす着床が起こる。それが起こらないときには月経が起こるという循環を取り戻すことが大切です。
(6回目)体調がすごく良くなってきたという。
(13回目)2ヶ月後に体外受精移殖をしたいと希望があった。体質改善するまで治療を続けると、その成功率も格段に上がると伝えた。
(17回目)低温期には36.6度付近、排卵後の高温期には体温が上昇して36.9度ある。基礎体温曲線は正常になってきた。
(20回目)1週間前に排卵があった。基礎体温は36.9度まで上昇した。手術を行った病院で造影剤を使ったCT検査をした。子宮を診た結果、双角子宮の手術をもう一度行い、子宮の形を綺麗にしようと勧められた。患者様は双角子宮の再手術をお断りした。
(21回目)通常、高温期がいつも11日間の所、今月は16日間続いた。いつもなら少しの出血があって生理が来る。今回は出血したり止まったりとしていたので、検査薬で調べたら陽性だった。自然妊娠でした。ご自分でしていた灸を中止した。
(22回目)赤ちゃんの心拍が見えた。
(23回目)赤ちゃんは8.5ミリの大きさに成長していた。お腹が張ってジンジン痛む。つわり中である。7週目。
(24回目)8周目。つわりがひどい。腹痛と冷や汗が出た。施術中、早い段階からお腹が、非常に楽になって気持ち悪さが消えたと患者様が訴えた。東洋医学で説明します。妊娠3ヶ月目からは胎児の心臓機能が構築される時で、母体から胎児に心の気が流れ、母体の心気が不足してこの症状が起こる。2ヶ月目が終わる8週目から12週目につわりがきつい。しかし、母体が健康で気の変動がない場合、つわりはほとんど起こらない。
(26回目)つわりは少しあるが緩解してきた。梅干しや酢が欲しくなると患者様。双角子宮の執刀医師に産科医師の紹介状を持って行くと『双角子宮で自然妊娠?分からないもんやねえ』と3回言われたとのこと。
(29回目)14週目。赤ちゃんの頭の大きさは約3cm、体幹は約10cm。来週、戌の日の腹帯をする。
(31回目)22週目。病因を示す脈の変動がストンとなくなった。ここで不妊治療を終了した。
体全体の「気・血・水」を統括するネットワークである『経絡』の機能が正常に働いていない状態、つまり、体が健康でない状態では、妊娠することがなかなか難しい。まず、きちんと不妊の原因を根本的に治すことが、どうしても必要です。この患者様の場合、脈が正常になり体質改善ができた結果の『自然妊娠』だと考えています。
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脈診経絡はり治療専門
あん鍼灸院
香川県高松市木太町1247-11
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