1. 主訴
不妊症
2.患者様
40歳前半
3.現病歴と症状
1)3年前、病院で体外受精移植にて第1子誕生。1年前から、さらに不妊治療を開始した。卵子が2個凍結保存してあったので移植を行った。しかし、2回とも妊娠には至らなかった。本年、3回目の移植を行ったが、これも妊娠に至らなかった。現在、卵子1個を凍結保存している。
2)右卵管が閉塞している。左は正常である。しかし、排卵はほとんどの場合、卵管閉塞している右側卵巣より起こっている。
3)基礎体温は、低温期(36.3~36.4度)と高温期(36.8度位)で正常である。月経周期は28~30日である。
4)収縮期の血圧がほぼ100mmHgでやや低い。
5)踵と母趾球の肌肉が痩せて柔らかい。
鍼灸治療で体質改善をして第2子を授かりたいと来院されました。
4.治療結果
(1回目) 脈診と腹診、および問診等から体と病、および経絡十二経の「陰陽虚実」を診て治療方針を決定。鍼で全身の気の調整を行う治療を開始。
妊娠がなかなかできないのは、その原因が必ずあります。その原因を治すことが治療の目標です。なかなか妊娠できないのは、経絡という体の制御システムが変動しているためで、それを修復する治療を行う。
妊娠は、基礎体温が低温期には低く抑えられ、その間、卵子を育て卵子が育てば、それを包む卵胞の爆発という排卵が起こり、続く高温期には体温が上昇し卵子の細胞分裂と卵子からの血管を子宮内膜に根をおろす着床が起こる。それが起こらないときには月経が起こるという循環が大切です。
(3回目)3日前、排卵があった。患者様には「卵管閉塞」を治す目的で治療してゆけば、不妊の原因を解消できると説明した。
(6回目)月経以降、基礎体温のばらつきがある。このばらつきを無くし、さらに高温期と低温期がきちんと別れるように鍼で治療してゆく。本日、排卵があった。
(13回目)病院ではホルモン剤を使用しないで自然採卵をする方針だ。
(18回目)採卵をしようとしたが、排卵した後だった。排卵した後の空洞が見えた様だ。翌月は卵胞は見えたが卵子がなかった。
(31回目)患者様は、病院にて保存凍結卵を使用した体外受精移植を実施した。内膜は8.7mm。足裏の肌肉が痩せて、歩くと骨が当たって痛いと訴え始めた。靴の中敷きを入れている。
(33回目)妊娠結果が出た。残念な結果に終わった。治療方針を変更した。
(36回目)足裏の痛みが治っている。中敷のない靴でも痛みなく普通に歩ける様になった。自然に排卵があった。体温は36.8度に上昇した。
(38回目)高温期が続いている。基礎体温は36.9度位に上昇した。先月の生理から35日(通常は28~30日の周期)経つが、まだ生理がこない。病院にゆくと胎嚢が見えた。ドクターが驚いたそうです。自然妊娠でした。
(39回目)妊娠が確定した。心音が聞こえるまで不安だと言う。赤ちゃんの心臓が形成される8週目まで待つことにした。
(40回目)8週目。病院で心音を確認した。胎児の大きさは2cmくらいであった。
(41回目)10週目。母子手帳がもらえた。脈状の変動は少なくなりつつある。
(44回目)16週目。踵の痛みはもうない。
(45回目)18周目。順調である。胎児の重さは約200g。心臓も指も動いている。母体の血圧は105/51mmHgになっていた。脈状は正常に戻っていた。今回をもって治療を終了した。
その後、患者様から3500グラムの女の赤ちゃんが誕生したとのご連絡があった。お名前を尋ねるとまだ、命名できていないとのことでした。赤ちゃん誕生、鍼灸師として嬉しいです。
以上