1.主訴
アトピー性皮膚炎/頭痛/過呼吸
2.患者様
9歳 女性
3.症状と現病歴/治療結果
症状と治療結果一覧
病名 | 症状と現病歴 | 治療結果 |
アトピー性皮膚炎 | 発症部位;膝裏・肘内側・脇下・首 皮膚炎症と痒い湿疹が出て、乾燥肌のようになる |
治癒 5.参照 |
頭痛 | 締め付けられるような痛みがあり、 頭痛の時には寝込むような痛みを伴い苦しい |
治癒 |
呼吸促迫(過呼吸症) | ピアノの習い事の時に息がしにくくなって ハーハー言って呼吸が促迫した |
治癒 |
疲労感 | 毎朝、疲れたようにだるくて起き上がれない | 治癒 |
内熱 | 風邪でもないのに、体温が39度まで上がった | 治癒 |
4.「アトピー性皮膚炎」
1)症状
「アトピー性皮膚炎」とは痒い湿疹が繰り返し起こる病で、目や耳の周り・首・肘や膝の窪み・背中や腹部などに発症します。痒い湿疹がほぼ左右対称に発症するのが特徴です。
2)原因
「アトピー性皮膚炎」は、その症状からアレルギー疾患と捉えがちですがそうではありません。アレルギーというのは外因に対して体が反応するという現象ですが、「アトピー性皮膚炎」は必ずしもアレルギー体質の方がかかる病気ではありません。正確にはその中にアレルギー体質の患者様が含まれているけれども、病気はアレルギー疾患ではない。
ヒトは、出生以降も後天的に体質が変わります。体質は、先天と後天とに分けて考えられていますが、これらは連続しています。その中で起こった体質変動によって、皮膚のバリア機能だけではなく皮膚の動態平衡が崩され皮膚機能が乱れます。そのために「アトピー性皮膚炎」が発症します。
図1のように、皮膚の表皮は基底層/有棘層/顆粒層/角質層(角層)に別れて性質も機能も別のものです。表皮と真皮は全く別々の組織です。特に基底層は表皮の細胞分裂の起点で、メラニン細胞が存在します。有棘層や顆粒層は表皮細胞の変化が見られるところです。角質細胞はそれらの細胞が死んだもので、7層くらいに積層し皮膚を守っています。最終的には垢となって脱落します。
この全身を覆う袋状の表皮は、その三分の一を損傷すると生命に危険が迫るほど大切なものです。部位によって異なりますが、腹や胸側、腕や脚の内側の表皮が損傷した場合は、もっと少ない損傷でも死の危険があります。それは、生死に直結する陰の経脈が流注しているからです。それを損傷すると身体の制御が出来なくなるためです。
皮膚は、どちらかといえば現代医学の中ではややおろそかにされている分野ですが、実は生命体の命を存続させている最大の臓器で、重要度は脳と肩を並べるものです。強いていえば生命体としては皮膚が脳よりも大切で、脳はなくても生命は維持できるが皮膚がないと生命は全く維持できません。そして皮膚にある経脈、すなわち動態平衡コントローラーが体を制御しています。脳がない動物にはイソギンチャクやホヤなど多くの生物がいます。彼らは脳でないところ、即ち皮膚と触覚で生命体を維持している動物で、下等動物ではないのです。イソギンチャクは地球で繁殖に成功している生物の一つです。
話を戻しましょう。「アトピー性皮膚炎」は皮膚が崩れたようにジュクジュクになって汁(体液)が出たり、その後、反対に皮膚が乾燥してかさかさになったり、真っ赤に炎症を起こし痒みが激しくなったり、皮膚が黒く変色したりと症状に激しいものを伴います。それらは皮膚の機能損傷によって起こるもので、図1のように正常皮膚細胞がきちんと積み重ねられた表皮であれば、アトピー性皮膚炎は起こりません。特に、基底層という細胞群の損傷は激しい症状を引き起こします。それは基底層が表皮の細胞分裂をしている場所であり、体を外界から守っている最大のバリアだからです。
このように皮膚の動態平衡が崩れ、皮膚の組織や機能が正常に働かなくなる病気が「アトピー性皮膚炎」です。治療は鍼術で皮膚の動態平衡を取り戻し、皮膚機能を復活させることが不可欠です。それさえできれば、寛解しながら根本的に治癒すると思います。
5.アトピー性皮膚炎の治療結果
病にはそれを引き起こす「病因」が必ずあり、それを治すことが「体質改善」です。体質改善が進むと症状が消失してきます。症状がなくなれば、脈状が正常になるまで鍼術で体質改善を続けました。その結果が根本治癒に至ります。
写真を元にその経過を以下に示します。
アトピー性皮膚炎 | 備考 | |
21/9/18 | 膝の左右共に発疹がでて痒い。 他に両肘の内側や首、脇にも発疹がある。 |
|
21/10/2 | ステロイドは使用していない。 | |
21/11/20 | まだ少し痒い。 | |
21/12/18 | ほぼ治癒 | |
22/2/5 | 痒くない。治癒 | |
22/5/13 | 脈が正常に戻り、根本治癒した。 |
以上
****************
脈診経絡はり治療専門
あん鍼灸院
香川県高松市木太町1247-11
****************