1.主訴
爪甲剥離症
2.患者様
20歳代前半 女性
3.症状と現病歴
表1.症状と現病歴一覧
病名 | 症状と現病歴 |
爪甲剥離症 | 7年前にカンジダ酵母菌に感染し、右手母指の爪周囲に炎症が起こり、膿がでた(カンジダ性爪囲炎)。その後、全指に感染した。爪は厚く、かつ凸凹状になり、ついには全指の爪が脱落し無くなった。その後、爪は次第に伸びてきたが、爪床と爪甲は接着せず離れ、両手の全指が1/2程、爪甲剥離している。すでにカンジダ酵母菌はいない。 |
点状陥凹 | 爪にはクレーター状の小さい点状陥凹がある。『爪乾癬』と考えられる。 |
4.「爪甲剥離症」
1)症状
爪甲と爪床間は、コラーゲン線維で固く接着しているが、そのコラーゲン線維の架橋という接着性能が低下すると簡単に剥離する。ここに隙間ができ、爪床部は硬く角質化し、爪は白く見える。これが『爪甲剥離症』です。
2)原因
爪甲剥離症は、患者様の体質の変化、すなわち病を反映している。「体質変化が起こっているよ」という信号です。爪は体質の変化を端的に現し、爪の変形(巻爪や凸凹、横縞や縦縞、スプーン状)や変色(黒や黄色、白色)、爪の剥離、強度の低下(もろくなる)などを呈する「病の情報発信器官」なのです。当院では、患者様の手足の爪や指の状態を必ず診て、身体の変化を察知します。それらと他の症状を総合して診て、さらに脈診を以って体質変化を治療する方針を導きだします。
5.「爪甲剥離症」の治療結果
病にはそれを引き起こす「病因」が必ずあり、それを治すことが「体質改善」です。
写真を元にその経過を以下に示します。
表2.治療経過
回 | 治療結果 | 備考 |
初診 | ![]() |
左手の爪先部分が1/2以上剥離している。剥離部分の境界はギザギザ状である。 (写真)(左手、右から示指、中指、薬指) |
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これまで治療方針を検討しながら治療を続けたが、なかなか爪が接着することはなかった。しかし、ここにきて剥離部分の爪甲と爪床は接着して上昇してきた。体質改善されてきたことが分かる。爪乾癬のような点状陥凹が見える。 |
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剥離部分の境界がさらに上がってきた。爪と爪床が接着しつつある。 |
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さらに、爪の剥離境界がぐっと上がってきた。かなり良くなってきた。 |
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点状陥凹が少なくなり、爪甲剥離は全指のうち3本が上まで接着した。写真の剥離境界線は奇麗になりつつある。 |
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爪甲剥離はほとんどなく、左手薬指に少々残るのみである。剥離境界もすっときれいになった。点状陥凹がほぼ消えた。今回で治療を終了した。カンジダ酵母由来の爪甲剥離は、爪と爪床の「コラーゲン接着架橋」および爪の細胞分裂を行っている「爪基母」をひどく損傷しているために治療は難しいと考えていましたが治癒しました。 |
以上
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脈診経絡はり治療専門
あん鍼灸院
香川県高松市木太町1247-11
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