自然妊娠できない【治験例37】|あん鍼灸院

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不妊

1. 主訴

不妊症

2.患者様

30歳代後半

3.現病歴と症状

1)これまでの不妊治療

半年前から病院で不妊治療を行なっている。排卵誘発剤やホルモン剤の服用が治療の中心だった。人工授精を2回行なったが、妊娠はできていない。次は体外受精移植を行いたいという患者様の希望がある。

2)子宮内膜症(卵巣チョコレート嚢胞)

1年前、病院で子宮内膜症が左卵巣にあると診断されて、その卵巣摘出手術を受けている。卵巣は6.5cmになっていた。

3)基礎体温

低温期の基礎体温が高い。36.7~36.9度近くあり、高温期の基礎体温に近い。排卵・月経は正常に起こっている。

ヒトは妊娠するために、卵子を育て遺伝情報などをきちんと写し込む為に身体の基礎体温を下げて行う(低温期)。その後、排卵。受精が完了するとともに基礎体温を上げて細胞分裂を促進させ、ヒトという個体を形成してゆきます(高温期)。このために、低温期と高温期という二相の基礎体温が不可欠です。低温期が高いと卵子をきちんと育てられず排卵ができません。高温期が低いと細胞分裂が進まず胎児が育ちません。特に「陽中の陽」の臓器と言われる「陽の気」が最も必要な心臓がほぼ2ヶ月目(7週目から9週目)に、きちんと形成できません。それを取り戻す必要がある。

以上のことを、鍼で体質改善をして妊娠できる体質になるように治療を行いました。

4.基礎体温曲線

4ー1.卵巣・子宮と性ホルモン、および基礎体温曲線の関係

女性には一定ではないが約28日毎の性周期が見られます。この最も明らかな特徴は、月経出血です。月経の最初の日を月経周期の第1日目と数えます。卵巣は皮質と髄質よりなる。皮質には「卵胞」と「黄体」がある。髄質は血管組織で占められている。

卵巣周期は、卵胞期/排卵/黄体期に分かれます(下図2段目)。この周期は、下図1段目のように下垂体前葉から分泌される2種類の性腺刺激ホルモン(FSH;卵胞刺激ホルモンとLH;黄体形成ホルモン)によって起こります。その性腺刺激ホルモンによって、図3段目のように卵巣からは卵胞ホルモン(エストロゲン)、黄体からは黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されます。
性周期

図;卵巣・子宮と性ホルモン、および基礎体温曲線の関係

 

4-2.  性周期

1)【4-1.図2段目】卵巣内で原始卵胞(胎生期の卵巣内に約700万個、思春期には約1万個)が発育を開始します。
2)【4-1.図1・2段目】FSHとLHが調節分泌され、卵胞が成熟します(卵胞期の基礎体温は低温期)。子宮内膜の厚みが増してきます。
3)【4-1.図1・2段目】卵細胞(卵子)が一定以上の大きさに成長すると、下垂体前葉からの強いLHの刺激(LHサージという)で排卵が起こり、卵胞内の卵子と卵胞液が卵巣外に破裂するように遠心的に放出されます。1回の月経周期毎に卵子1個が成熟し、放出されます(月経初日から約14日目)。この時から基礎体温は高温期を形成し卵子は受精着床後、分裂を繰り返し胎児が成長してゆきます。
4)【4-1.図2・3段目】排卵を終えた卵胞は黄体に変化します。黄体はプロゲステロンを分泌します。
5)【4-1.図2~4段目】妊娠が成功すれば、プロゲステロンは継続して出され、子宮内膜も絨毛をしっかりつくり胎児の成長を促します。妊娠が成立しなければ、黄体は白体へと変わり、その仕事を終えます。このとき、月経すなわち子宮内膜の剥離と子宮からの遠心的排出が発来します。

しかしながら、この性周期は、あたかもFSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体形成ホルモン)、卵胞ホルモン(エストロゲン)や黄体ホルモン(プロゲステロン)がコントロールしているかの様に見えますが、ホルモンは狼煙(のろし)で、いわゆる信号(サイン)の様なものです。もっとヒトの本質的なもの、すなわち「哺乳動物」の特徴は、身体が自分の体温をコントロールできることです。卵子をつくる段階では比較的低温で、受精着床後は細胞分裂を繰り返し胎児の成長を促すために高温で維持することが、この周期を達成するためには不可欠です。ヒトには、体温を上げる機能と下げる機能が備わっています。この機能がうまく働かないと基礎体温を微妙に調節できなくなるのです。

 

4-3.基礎体温曲線の実際

前述した様に、卵子を丁寧につくる低温期と細胞分裂を盛んに行い胎児を育てる高温期が排卵を挟んで形成されます。基礎体温は簡単にご自身の性周期を知ることができるとともに、その曲線が下図の様に綺麗に二層を形成できているかで、妊娠ができる体質であるかを知ることができます。

基礎体温曲線が全体に高い、例えば低温期でも36.7度以上あるとか、高温期はもっと高く37度を超えている様な場合です。基礎体温曲線が全体に低い、例えば低温期で36度以下、高温期でも36.7度に達していない様な場合です。また、低温期と高温期の差がなく二層を形成できていない場合、さらには、基礎体温のばらつきが激しく、高温期なのか低温期なのかがわからない様なこともあります。これらの場合、妊娠がなかなかできないのです。そこで、当院の治療は、変動した体温調節機能を気の調整で修復し、正常な基礎体温曲線に戻します。

 

基礎体温曲線

図;基礎体温曲線

5.治療結果

(1回目)脈診と腹診、および問診等から体と病、および経脈十二経の「陰陽虚実」を診て治療方針を決定。

妊娠がなかなかできないのは、その原因となる「病因」が必ずあります。その病因を治すことが治療の目標です。鍼で全身の気の調整を行う治療を開始し、患者様が抱える病因を解消する治療方針とした。

(5回目)排卵したかどうか、わからない。低温期基礎体温は36.7~36.9度を推移している。低温期に高い基礎体温が続いている。

(6回目)病院で、ホルモン剤を使用した人工授精を実施した。しかし、妊娠はできなかった。

(10回目)翌月、排卵があった低温期基礎体温は36.5~36.7度で、排卵後の高温期の基礎体温は36.9~37.0度まで上昇した。その期間は13日間であった。次月に採卵したい希望がある。基礎体温が正常になれば、行うこととした。

(14回目)病院で採卵しようとしたが、LH/FSHバランスが不良ということで採卵を中止している。

(15回目)低温期基礎体温は36.5~36.6度で安定してきた。

(18回目)病院で採卵をした。3個の胚盤胞を凍結保存できた。

(22回目)体外受精移植を行なった。

(23回目)妊娠がわかった。

(25回目)7週目。心拍を確認できた。

(27回目)インフルエンザに罹った。10週目。赤ちゃんは2cmほどに成長している。

(28回目)11週目。3.8cmに成長した。母子手帳が配布された。午後5時以降のつわりがひどくなってきた。吐き気がある。吐くこともある。午前中と夕方が眠い。重いつわりがあるのは、まだ体質変動が残っているということだ。つわりがないと赤ちゃんが元気でないのかしらと思っている方もいらっしゃるが、体質の変動がなければ、つわりは軽い。妊娠中および出産後の体調を考え、体質の変動がなくなるまで治療を継続することとした。

(31回目)15週目。つわりが軽くなってきた。

(32回目)16週目。脈の変動が少なくなってきた。

(34回目)19週目。つわりは少ない。脈の変動がなくなっている。気の変動がなくなり体質改善したと判断し、治療を終了した。赤ちゃんの体重は3,300グラムとのことでした。

以上

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脈診経絡はり治療専門
あん鍼灸院

香川県高松市木太町1247-11
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